新宿、四谷エリアで弁護士をしている石原です。
今回は、無料相談会やネットでの相談でよく聞かれる「専門家を入れずに、自分たち家族だけで遺産相続(遺産分割)をするにはどうすればいいのか?」という疑問にお答えいたします。
第1 遺産分割について
法律では、遺産分割について形式が決められていません。単純に「いつでも、その協議(話し合い)で、遺産の分割をすることができる」(民法第907条第1項)と書かれているだけです。
日本の民法では、意思表示や法律行為で書面を必要とするものは、特別にそのように規定しています。
例えば、ほとんどの契約は意思表示が合致すれば成立する中で、保証人になる場合は、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」(民法第446条第2項)と、いわゆる保証契約書を作らなければいけないと規定しています。
家族関係でいえば、結婚や離婚は「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。」(民法第739条第1項)、「前項の届出は、当事者双方および成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。」(同第2項)、「(婚姻の届出)の規定は、協議上の離婚について準用する」(同法第764条)と、届け出が必要と明確に定められています。
つまり、法律に形式が定められていないため、遺産分割協議は本来は書面でする必要はないのです。
しかし、遺産分割の結果に基づいて、土地や家の登記を変更するため、預金の解約をして払い戻しを受けるには、一定の様式が求められていますので、以下では遺産分割協議書の基本的な書き方などを解説いたします。
第2 遺産分割協議書の基本的な様式
1.遺産分割協議は、相続人全員で行ってください。なかなか連絡が取れないとか、どこにいるのか分からない人がいたり、あるいはご高齢で自分で判断ができない人がいるからと、その人たちを抜かして協議をしても、協議は有効とはなりません。
どこにいるのか分からない人については、できるだけ調査をして、場合によっては不在者財産管理人を家庭裁判所に選任してもらってください。ご自分で判断できないような人は、成年後見人などを家庭裁判所に選任してもらってください。
また、しっかりと戸籍を調査し、前妻との間に子どもがいないこと等を確認してください。
2.協議した相続人全員が、しっかりと署名し、実印で押印して下さい。認め印で済ませるのではなく、印鑑登録をして印鑑登録証明書も取得してください。
印鑑登録証明書は通常3ヶ月以内のものが必要となりますので、できれば遺産分割協議書に押印する直前に取得してください。また、協議書が有効期限内に押印されたことを示すためにも、協議書に日付を忘れずにつけてください。
3.表示の仕方についても注意が必要です。
不動産の特定は、登記簿に記載されている通りの所在地で記載してください。住所とは異なることも多いので、住所で記載するのではなく、しっかりと登記を確認して記載してください。
登記を取得すると、実は被相続人以外の人と共有状態にあることが判明することもありますので、面倒くさがらずに取得してください。
預貯金も、銀行名、支店名、口座種別、口座番号、お亡くなりになった日の残高を確認して、できるだけ特定して記載してください。残高が通帳に記載されているものと異なっていたり、同じ支店にいくつか口座があったということもあり得ますので、しっかり銀行に確認し残高証明書を出してもらいましょう。
4.財産や相続人が多く、一枚に収まらないときは、ページとページの間に楔印を相続人全員で押してください。
または、製本して製本テープ状に全員で押印することもありますが、間のページを抜かしたり、あとから挿入したりできない方法を取ってください。
遺産分割協議書の形式としては、以上の各点に気を付けていただければ、概ね大丈夫です。
内容については別の機会に解説いたします。