よくある質問

2020.06.20更新

丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩2~3分の事務所で活動しています弁護士の石原です。

 

離婚後、子どもが養子縁組した場合は、養親が先に養育の義務を負うとした裁判例を紹介いたしました。

裁判例では、「養親が資力がない時の理由によって充分に扶養の義務を履行できない場合を除いて」としているため、養子縁組後も実親が養育費を支払わなければならない場合もあり得るとしています。

そこで、どのような場合に実親も養育費を負担しなければいけないのでしょうか?また、その場合に負担すべき金額はどのように計算すべきでしょうか?

 

1.養親より実親の方が高収入である場合


 

親が子に対して生活保持義務を負うのであれば、実親は子に対して自身の生活と同水準の生活をさせる義務があり、養親の収入がそのような生活をさせるのに十分でないのであれば、差額を実親が負担すべきではないかとも考えられます。

しかし、子に対する扶養義務は、第1次的に養親が負い、養親において十分に扶養義務を利用できない場合に限り、実親も扶養義務を負うべきであることから、養親より実親の方が高収入であっても、非親権者である実親にそのような差額支払を求めることは出来ないとされています。

 

2.実親が義務を負う場合


 

何をもって、養親が十分に扶養義務を履行できないとするかは、生活保護法による保護の基準が一つの目安となります。

また、子の需要、非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべきとされています(福岡高等裁判所平成29年9月20日決定)。

実親の学歴、職業、収入や、推認される意思から、どの程度の生活をさせる意思があるか、これまでの子の生活水準の連続性も勘案することになります。

 

3.実親が負担すべき金額の検討


 

生活保護の基準により支給される生活扶助と、養親世帯の世帯収入を比較し、幾ら不足しているかを検討することになります。

その際、子どもの生活費の不足金額だけを算定すべきであるため、養親らの生活費は控除しなければなりません。

生活保護制度の保護基準では、学校外活動費が教育扶助の対象となっていませんが、諸般の事情から実親が子に対して人並みの学校外教育等を施す程度の水準の生活をさせる意思が認められるのであれば、不足する教育費等も負担すべきことになります。

 

養育費のことでお悩みの場合は、是非専門家にご相談ください。

投稿者: 石原晋介法律事務所

2020.06.12更新

丸ノ内線「新宿御苑前駅」より徒歩2~3分の事務所で活動をしています、弁護士の石原です。

 

離婚後も未成年の子どもがいる場合、養育費の支払いをしなければいけないということを、ほとんどの人はご存じだと思います。

では、離婚後に子どもが一緒に暮らしている母または父(同居親)の再婚相手と養子縁組した場合、養育費はどうなるのでしょうか?支払いを免れたり、減額を求めることができるのでしょうか?

 

1.養育費の必要性


夫婦は離婚により法的に他人同士になりますので、相手方の以後の生活について扶養義務は原則として負いません。

しかし、父母が離婚し、別々に暮らすことになっても、子どもにとって親であることに変わりはなく、親は依然として子どもに対する扶養義務を負います。

この義務は、親権者となったかどうか(現在日本では離婚すると単独親権となります)、一緒に暮らしているかどうかは関係がありません。

どの程度の義務を負うことになるのかについては、父母の離婚により、子どもの生活が苦しくなることがないように、義務者の生活レベルを下げても同程度の生活ができるようにしなければならないと言われています。

つまり、子どもが困ったときに、余裕があれば助ければいいという程度ではないとされています。

 

2.義務者が増えた場合


養育費は、親が子どもに対して負っている扶養義務だとすると、親が増えた場合はどうなるのでしょうか?

養子縁組をした場合、養親と子どもは法律上親子になりますが、実親も依然として親であることに変わりはありません。

したがって、子どもに対して扶養義務を負う者が増えたことになります。

そこで、離婚時に決めた養育費を養子縁組後も支払うべきか、養親と実親の扶養義務の順位が問題となります。

 

3.裁判所の判断(過去の審判例)


 

この点が議論された家庭裁判所の先例(札幌家庭裁判所小樽支部昭和46年11月11日審判)では、 おおよそ次のように判断しています。

「養親と実親との未成熟子に対する扶養義務の順位について、明文の規定が存しないが、養子縁組には子の養育を、扶養をも含めて全面的に引き受けるという合意が含まれている。したがって、実親との関係は扶養をも含めて一定の範囲で制限されるものと考えることができ、養親が資力がない時の理由によって充分に扶養の義務を履行できない場合を除いては、実親の扶養義務は順位において養親のそれに後れるものと解する

つまり、まずは一緒に暮らしている養親が扶養すべきであり、養親の資力が充分義務を履行できない場合は、理由によって、実親が義務を負うことになります。

この例では、養育費の支払い約束をした調停条項を取り消して、義務を免除しています。

また、その取り消しは遡及効(取消の理由が出た時点にさかのぼる)があるとされています。

 

離婚に伴う養育費や別居後の婚姻費用についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

投稿者: 石原晋介法律事務所

2019.08.14更新

丸ノ内線新宿御苑前駅近くで法律事務所を開いています、弁護士の石原です。

 

最もよく聞かれる質問「私は離婚すべき(離婚した方がいい)でしょうか?」を取りあげます。

 

1.私の回答


 

私に限らないかもしれませんが、私は最終的に決断をするのはご依頼者ご本人であり、弁護士はそのご決断のための情報提供や、ご決断に後悔が無いようにサポートすべきであると考えています。そのため、「~すべき」や「~した方がいい」という回答は基本的にはいたしません。

離婚についてまだ決断されていない方から、表題のようなご質問を受けた場合、「離婚するとこうなります。離婚できるかどうかは、こういったところが問題となるでしょう」「婚姻を継続すると、こういうことになります。最終的には、相手方からこうされる可能性があります」等と回答することが多いです。

今回は、「離婚すべきか(した方がいいか)?」に対する直接の答えは「ありません」が、判断材料となる「離婚するとどうなるのか」「婚姻を継続するとどうなるのか」を一般的に解説いたします。

より詳しい情報は、徐々にページを追加していきます。

 

2.婚姻継続した場合(婚姻の効力)


 

まず、離婚せずに婚姻を継続した場合はどうなるのでしょうか。

基本的には、婚姻関係から生じる法律関係がそのまま妥当することになります。

(1)夫婦間の同居・協力・扶助義務

夫婦は、同居して、お互いに協力し、助け合わなければいけません(民法752条)。

勿論、いろいろな事情から別居を余儀なくされることもありますので、同居義務も絶対的なものではありません。

同居を求める審判も可能ですが、これを直接強制・間接強制することもできないとされています。

 

(2)婚姻費用分担義務

夫婦は、資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用(生活費等)を分担しなければいけません(民法760条)。

離婚するか、しないかで争っているご夫婦であっても、離婚が成立するまでは夫婦であり、婚姻費用の分担をしなければいけません。

現在、多くの場合は【算定表】に基づき金額を検討しています。

 

(3)貞操義務・重婚禁止

不貞行為(いわゆる不倫)が離婚原因とされていることから、夫婦は互いに貞節を守るべきとされています。

また、重婚が禁止されている(民法732条)ことから、他の人と交際や、結婚状態になることは許されません。

 

(4)相続

配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。

 

(5)姻族関係

3親等内の姻族は親族にあたります(民法725条)。

3親等内の親族間において、扶養義務を負うこともあります(民法877条)。

 

(6)子ども

婚姻中は、未成年の子に対する親権は、父母(夫婦)共同で行います(民法818条)。

 

3.離婚した場合


 

(1)同居・協力・扶助義務、貞操義務

夫婦ではなくなるため、同居義務などはなくなります。

また、自由な交際が許されるようになりますし、結婚しても重婚関係には当たりません。 

 

(2)婚姻費用分担義務・養育費請求

夫婦ではなくなるため、婚姻費用の分担を求めることができなくなります。

生活費を相手方の収入に頼っている人は、離婚後も生活できるのか慎重に検討してから離婚の申し入れをしたほうがいいでしょう。

ただし、未成熟な子どもの養育に必要な費用(養育費)を求めることができます。

 

(3)相続、財産分与、慰謝料請求

離婚してしまうと夫婦ではなくなりますので、相続することは出来ません。

しかし、離婚時に婚姻期間中に夫婦協力して築き上げた財産の精算(財産分与)を求めることができます。

また、場合によっては相手方に慰謝料請求をすることもできます。

離婚後の生活に不安がある場合などは、財産分与で調整することもあります。 

 

(4)姻族関係の終了

離婚によって、姻族関係は終了しますので、離婚後は親族ではなくなります(728条)。

 

(5)子ども

離婚後も、子どもに対する関係で父母であることに変わりはありません。

離婚する際に未成年の子どもがいる場合は、どちらが親権者となるかを定めなければいけません。

一緒に生活をしないこととなった親とも親子関係が終了するわけではないので、子どもの為に面会交流を実施する必要がある場合は、ルールを定めるようにしてください。

 

(6)年金分割

相手方が厚生年金に加入されている場合は、年金分割が可能です。

年金額を分割するのではないので注意が必要です。

 

 4.離婚するかどうかの判断


 

以上のように、婚姻を継続した場合の生活と、離婚した後の生活を比較して離婚するかどうかをご判断いただくことが多いです。

勿論、そういったメリット・デメリット以上に、夫婦関係を解消したいという気持ちの方が強く、デメリットが大きいとしても離婚したいという方もいらっしゃいます。

 

また、離婚したい、婚姻関係を継続したいと思っていても、事情や相手方の気持ちによっては望んだ結論にならないこともあります。

 

離婚を申し入れられた場合や、離婚したいと思った場合、結論がまだ固まっていない段階でも、離婚する場合、しない場合の違いや、今後の準備についてアドバイスすることができますので、お気軽にご相談ください。

ご相談のご予約、お問い合わせは、↓からどうぞ。

投稿者: 石原晋介法律事務所

2019.01.22更新

丸ノ内線の新宿御苑前で弁護士をしている石原です。

 

今回は、遺産分割協議の効力についてのご質問にお答えいたします。

折角まとまった相続のお話が、あとから無効であると分かって、また揉めてしまうことがないようにご注意ください。

 

1.ご質問


 

被相続人が遺言を残さずになくなりましたが、家族全員で話し合い、みなが納得できる分け方で遺産分割協議書を作成しました。

家族全員で話したほうがいいと思い、相続権がない被相続人の子の配偶者も話し合いに参加し、書面に署名したところ無効の恐れがあると指摘されてしまいました。

相続人ではない人が参加した遺産分割協議は無効となるのでしょうか?

 

2.遺産分割協議の当事者


 

遺産分割協議は、共同相続人全員でしなければなりません。

その他に、包括受遺者も相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ため、当事者となります。

相続人から相続分を譲り受けた人も当事者となります。

相続人全員が関与していない場合は、その遺産分割は無効となります。

では、これとは逆に、このご質問のように相続権を有していない人が関与した場合はどうなるでしょうか。

(未成年者や、判断能力が衰えてしまった方がいる場合については、別の記事で解説いたします。)

 

3.裁判例


 

同じようなことが争点となった裁判例があります(大阪地方裁判所平成18年5月15日判決)。

この事例は、相続人として遺産分割に関与した方が、後に養子縁組無効と判断され、相続人でないことが確定してしまったため、遺産分割協議自体が無効ではないか争われたものです。

 

裁判所は、次のように判断しています。(判決を一部区切るなどしています)

(1)共同相続人でない者が参加して遺産分割協議が行われた場合であっても、共同相続人の全員が参加して当該協議が行われたものと認められる以上、直ちに当該協議の全部について瑕疵(かし=傷、欠点、欠陥)があるということはできない。

(2)むしろ、共同相続人でない者に分配された相続財産のみを未分割の財産として再分割すれば足りるとするのが、当該協議に参加した者の通常の意思に合致するとみられ、また、法律関係の安定性や取引安全の保護の観点からすると、いったん遺産分割協議が成立し、これを前提とする相続財産の処分等がされた後に当該協議の効力を常に全面的に否定することは、できる限り避けるのが相当である。

(3)共同相続人でない者が参加して行われた遺産分割協議は、原則として、当該共同相続人でない者の遺産取得に係る部分に限って無効となる。

(4)ただ、当該共同相続人でない者の遺産取得に係る部分に限って無効となると解するときは著しく不当な結果を招き、正義に反する結果となる場合には、当該遺産分割協議の全部が無効となると解するのが相当である。

どのような場合が、全部無効と解すべきかについては

(5)当該共同相続人でない者が取得するとされた財産の種類や重要性、当該財産が遺産全体の中で占める割合その他諸般の事情を考慮して、当該共同相続人でない者が協議に参加しなかったとすれば、当該協議の内容が大きく異なっていたであろうと認められる場合を例示しています。

 

4.まとめ

 


今回のご質問で、どのような分割内容になっているかは分かりませんが、相続人でない方が協議に参加しただけでは、協議全体が無効になるわけではありません。

その方が相続することになった財産を、共同相続人全員でどうやって分けるか話し合うことが出来れば、それで足ります。

ただし、その方が相続することになった財産があり、その方を抜かして話し合えば大きく異なった分割になっているような場合は、全体が無効となる可能性もあります。

 

折角まとまった遺産分割が無効とならないように、遺産分割をする場合は、一度専門家にご相談ください。

当事務所は、税理士と共同で相談を受けることができますので、二次相続の相続税も考慮した分割をご提案することもできます。

 

投稿者: 石原晋介法律事務所

2017.10.12更新

新宿・四谷地区で弁護士をしている石原です。

 

今回は、会社経営者さん、企業の担当者さんからよく相談を受けます、契約書作成時の注意点のうち、一部についてご説明いたします。

 

1.契約書とは


 

契約というのは、ほとんどの場合が書面で行う必要はありません。

これは、法的に書面の取り交わしが要求されていないという意味で、現実的に必要がないという意味ではありません。

法律で要求されていないにもかかわらず、なぜ契約書は作成されるのでしょうか?

お互いに契約交渉をし、「じゃあ、これでやっていきましょう」と喜んで会社に帰って、果たしてそれで仕事ができるでしょうか?

契約担当者は、交渉経緯を分かっているので、どのような契約か分かるかもしれませんが、実務担当者はどうでしょうか?

また、果たして契約担当者同士も、共通認識でいるでしょうか?

 

契約書は、どのような内容で合意したのかを明らかにし、契約に沿った仕事ができるようにするというのが大きな役割です。

また、紛争になった場合に、裁判官にどのような契約であったのかという証拠として提出できる証拠化ということも見過ごせません。

 

したがって、契約書は「誰が見ても契約内容・債権(要求できる権利)・債務(やらなければいけない義務)が分かる」ものでなければいけません。

 

 

2.契約内容の記載【5W1H】


 

誰が見ても、何をすべきか分かるというためには、どのように記載すべきでしょうか?

「甲は、乙に対して、バナナを100円で売る」

こんな条項だけの契約書は、果たして上記のような役割を果たしているでしょうか?

誰が? これは甲が義務を負っていることは分かります。

誰に? 乙さんに対して義務を負っていることは分かります。

何を? バナナを売るということは分かります。

幾らで? 100円で売るということは分かります。

問題がないように思えたのなら、トラブルが起きる黄色信号です。

 

甲が乙さんにバナナを売るとしても、分からないことが沢山あります。

甲はいつまでに乙さんにバナナを届ければいいのでしょうか? 今すぐ食べたい? ケーキを作る日に届けて欲しい? 毎日欲しい?

何に使うのかも、本数も、産地の指定があるのかも、引き渡し場所や方法も分かりません。

 

そこで、契約書を作成するときは、英語の授業で習った【5W1H】を意識して作成するといいでしょう。

誰が、誰に対し? 何を? いつ? どこで? 何のために? どのように?

全て必ず必要というわけではありません。

しかし、作成された契約書で決められていないけれど、問題となり得ると思うものがあれば、追加・修正をしてください。

 

私は漫画が好きなのですが、カイジという漫画の登場人物が次のように言っています。

「(金を)出す。出すが、その時と場所の指定まではしていない(中略)その気になれば金の受け渡しは10年20年後ということも可能だろう」

もちろん、通常は、契約全体から見て10年後20年後の受け渡しでも可能ということは無いでしょうが、履行期(いつ)というのはとても大事な要素です。

契約書に支払時期の記載があっても、納品から何か月も後になって支払いというような契約ばかりで、資金繰りが上手くいかない……

という事態もあります。

是非、契約書作成時には5W1Hに気を付けて、作成、取り交わしをしてください。

 

 

契約書作成について専門家の意見を聞きたい、作成することが難しいという場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。

 

投稿者: 石原晋介法律事務所

2017.10.11更新

新宿で弁護士をしています石原です。

 

最近は一時期ほどCMなどで聞かなくなりましたが、一時期は弁護士・法律事務所のCM・広告といえば過払金(過払い金)に関するものばかりでした。

しかし、ほとんどの人が自分には関係がないと思っているのか、過払金とは何か? どういう人が対象になるのか? 分かっていないように思います。

そこで、とても簡単に過払い金とは何か? というお話をいたします。

 

1.利息制限法・出資法・貸金業法


 

いきなり法律の名前が出てきてしまって、難しいように思うかもしれませんが、その名前の通り「利息を制限する法律」が日本にはあります。

しかし、少し前までの貸金業では、この法律で上限として定められていた利息以上の利息を取っていました。

「それって違法じゃないの?」と皆さん思うでしょう。

そうです。違法なんです。

しかし、実は他にも利息の上限を定めている法律があり、その上限が利息制限法より10%も高い利息を設定していたのです。

この間の利息をグレーゾーン金利と呼んでいました。

なぜこのようなことが起きるかと言いますと、それぞれの法律の目的が異なるからです。

利息制限法は民事上、もう一つの出資法は刑事上の利息上限を定めていました。

利息制限法を超えていても、出資法を超えていなければ罰則は課されません。

さらに、貸金業法という法律があり、一定の条件をクリアしていれば、このグレーゾーン金利を受け取ることができてしまっていました。

 

2.過払金


 

しかし、最高裁判所の判例によって、ほとんどのグレーゾーン金利が民事上無効となりました。

そのため、貸金業者は利息制限法の上限を超える利息を民事上も受け取れないという事態が生じました。

これまで業者がグレーゾーン金利として受け取っていた利息が、実はもらい過ぎで、消費者からすれば「払い過ぎ」だったわけです。

そこで、利息制限法の利率で借りたお金(元金)、利息、返済金を計算し直す(引き直し計算)と、実は借りていたお金(元金)も完済していて、そこから先は「過払金(過払い金)」となっているのです。

これは、貸金業者との取引明細を見ても直ぐに明らかになるものではないので、現在も返済中の人も、既に何年も前に完済している人も、過払金が発生している可能性があります。

 

3.過払い金の可能性がある人


 

過払金の可能性がある人はどのような人でしょうか?

上記のようなグレーゾーン金利を払っていた人です。

時期で言えば、おおよそ平成18年より前に貸金業者と契約していた人です。

その後、金利は見直されていますが、それ以前の取引について業者から自主的にもらい過ぎの金額を教えてくれたり、返してくれたりということはありません。

そこで、過払金があるかどうか確認したり、過払金を取り戻すためには、自ら行動を起こすしかないのです。

10年以上前に貸金業者から借り入れをし、苦労していた方は当時の契約書や明細、あるいは取引履歴を確認してください。

20%を超える利率が書かれていますと、払い過ぎのお金があったり、あるいは借金が実はもっと少なくなっているということがあります。

 

4.過払い金の期限?


 

広告などで、「過払金には返金期限がある」と聞いたことがある人も多いでしょう。

これは、過払金に限らず「消滅時効」という問題です。

昔のことを持ち出されたときに「時効だ」と反論するのを見たり、聞いたりしたことがあると思います。

「時効」の一つに、請求権が消滅してしまうものがあります。

お金の返還などの債権は10年で消滅時効にかかります。(平成29年10月現在。改正に注意してください)

過払金が一般に知れ渡ったのが、上記のように平成18年頃ですので、時効消滅してしまっている方が沢山出ていると思います。

この記事を読んでいただいた方の中で、平成18年より前に契約して、消費者金融やカードキャッシングを継続的に利用していた方は、是非取引履歴を取得していただく等、過払金の有無をご確認ください。

 

実際に取り戻したい、手続きについて具体的に相談したいという方は、当事務所までご連絡ください。

 

投稿者: 石原晋介法律事務所

2017.07.28更新

四谷、新宿御苑前で弁護士をしています石原です。

本日は、夫婦関係、男女関係でよくあるご質問について、お話しをいたします。

 

1 不貞慰謝料とは?


 

 

旦那さんが浮気をしていた。

交際していた男性の奥さんに二人の不倫関係がばれてしまった。

そういった時に、慰謝料請求をする、またはされるということは、皆さんご存知です。

私は小さい頃、イシャリョウは医者料、つまり治療費だと勘違いしていました。もちろん、正しくは【慰謝料】で「精神的苦痛に対する損害賠償」という意味です。

配偶者(夫や妻)やパートナーが、他の人と交際をしていると知ったとき、精神的に大きな傷を負ってしまうので、これに対して金銭的解決を図るということになります。

 

 

2 慰謝料の相場は?


 

 

「慰謝料」というキーワードでインターネット検索すると、上位の表示結果は「浮気・不倫の慰謝料相場」といったタイトルのページばかりになります。それほど皆さん相場というのを気にされているのが分かります。

たしかに、相場というのは請求する側も、請求される側も気になります。「世間一般の相場より安く請求してしまって損をするのではないか?」とか「相場以上の金額であれば払いたくない。」というお気持ちでしょう。

また、裁判上も「A裁判所ではとても高い慰謝料を認めるけれど、B裁判所だと慰謝料が低い」という不公平があると、皆さんの裁判に対する信頼を損ねてしまう恐れもあります。

 

しかし、私はご相談を受けると「慰謝料の相場というものは無いと考えています」とお伝えしています。

なぜ、私が不貞慰謝料、不倫の慰謝料に相場がないと考えているかですが、まずは「相場」を紹介しているサイトなどについて分析してみます。

インターネットの検索結果を見てみると、次のような内容が目につきました。「別居しない場合は50~100万円」など、パターンで分けて紹介されているもの。「不倫慰謝料は100万~500万円」とパターン分けせずに紹介されているものなどがあります。複数のサイトを見ると、概ね「50万円~500万円」という範囲に収まっているようです。

果たして、これだけの幅がある金額で、「相場」として見てもいいものでしょうか?

また、これらのサイトで紹介されているものは、「判決で認められた金額」であって、交渉や和解での金額を載せているサイトは少ないようです。

さらに、ほとんどのサイトでは、「様々な要因によって増減します」とか、「慰謝料額判断のポイント」を列挙してあるなど、具体的事情によって慰謝料額が異なることが付け加えられています。

 

つまり、裁判で戦って、裁判所が最終的結論として出した金額帯は、50万円~500万円という幅に収まっている、ということは出来るかもしれませんが、個々の事案については「異なる事情」「様々な要因」によって結論が決まっているため、【不貞慰謝料】というものの一般的相場はないと言っていいと思います。

 

実際、私も裁判外で交渉して、50万円~500万円の範囲外で妥結したこともあります。また、慰謝料請求したいというご相談者にお気持ちを聞くと、この範囲内でおさまる金額の請求でご納得される方は少ないです。

理論的にも、犯罪に対する刑罰のように、法律で慰謝料額の範囲が決まっているものでもありません。また、慰謝料の原因である「精神的苦痛」は、本来金銭に換算できないものですので、機械的に幾らと定めることができないものです。

 

以上のようなことから、私はご相談者には「不貞慰謝料に相場はないと考えています」とお伝えしています。それでも、やはりいくらくらいになるのかは皆さん気になるところなので、「私が持っているデータでは、判決で認められた金額としては、500万円以下という結論が多いです」とお伝えしています。

 

ご自分が不倫・浮気のトラブルに巻き込まれてしまった時は、具体的な事情によって裁判で認められる金額が異なってきますので、是非専門家にご相談ください。

 

 

投稿者: 石原晋介法律事務所

2017.05.01更新

新宿、四谷エリアで弁護士をしている石原です。

主に、ご家庭内の争いごとである離婚や相続、遺産分割の事件を取り扱っています。

 今回は、相続(相続税)対策のセミナーをやっていると、参加者から聞かれる「どうすれば親に相続対策をしてもらえるか?」というご質問にお答えいたします。

 

1 相続対策の重要性


 

 

テレビのサスペンスものなどで、遺産争いから殺人事件に発展して…などというストーリーを見たことがある人も多いと思います。

あるいは、近しい人から相続でもめてしまって、骨肉の争いまではいかなくても、疎遠になってしまったと聞いたことがあるかもしれません。

また、全く対策をしていないと相続税が莫大な金額になってしまい、泣く泣く家を手放すということもあり得ます。

このように、皆さん相続対策の重要性はお気づきだと思います。

 

2 相続対策の難しさ


 

 

しかし、相続は、困る人(相続人)と、対策ができる人(被相続人)が異なります。

また、相続は被相続人となる親など身近な人がお亡くなりになったときに始まりますので、どうしても考えたくない死んだあとのことを考えざるを得ません。

さらに、お金のことは親子でも非常に話しづらい話題ですし、お金のことを口にすると財産目当てと勘違いされてしまう不安もあります。

それらのことを考えると、どうしても将来困るであろう子どもの方から、対策ができる親に対して「相続対策」の話を切り出すのは難しくなってしまいます。また、親の方でも「いつかやらなきゃ」と思いながら、相談できる相手もおらず、時間ばかりが過ぎてしまいます。

 

 

3 相続対策はじめの一歩


 

 

そこで、私のお勧めする相続対策のはじめの一歩は、「今後の生き方」を家族や親子で話してみることです。

 

まずは、話の切り出し方です。誰かの介護や自宅リフォームの話が出れば、その話に乗っかればいいのですが、なかなか話のきっかけがない場合は、次のように切り出してみてください。

「知り合いから聞いたんだけど」とか、「最近テレビなどで知ったんだけど」と、第三者のお話として切り出してみてください。あくまで他人事として話をして、親に「そういえば、自分も」と自分事として受け止めてもらえるようにすると、「自分が死んだ後の話を子どもにされた」という感覚がなく、話を聞きやすいと思います。

 

話題にするのなら、「終活」がいいのではないでしょうか。

「終活」というと、「亡くなる準備」のように思えますが、そうではありません。あくまで「どう自分らしく生きるのか」が最大のテーマです。したがいまして、「終活」というワードは出さなくてもいいですし、誤解があるようなら避けた方がいいかもしれません。

そこでは、親御さんに「不安に思っていること」や「本当にやりたいこと」「今後の希望」を聞いてあげてください。

 

「不安」なことに対しては、その不安に対する対策(治療、定期検診)、相談相手(かかりつけ医、ご友人)、備え(保険、預金)を聞いて、不足があれば一緒に考えてあげてください。
「やりたいこと」に対しては、そのために必要な準備や楽しむために気を付けること、万が一が起きたときの対処について話し合うのがいいと思います。
「今後の希望」は、もう少し踏み込んだ介護、終末に向けてのご希望、準備、連絡先などを聞いたり、メモしてもらうのがいいと思います。

 

ここまで来たら思い切って相続のお話をしていただいてもいいですし、相続で困った第三者のお話しや、専門家のセミナーのお話などを切り出してみてはいかがでしょうか。

 

 

4 セミナーのご案内等


 

 

私は、月に一度のペースで相続に関するセミナーを行っています。

非常に小さな会場で、冗談を交えながらあまり難しくならないように心がけています。

ほとんどのセミナーは税理士さんと共同で 「争続・争族対策」と「相続税対策」として行っています。

どなたでも参加できるオープンなセミナーについては、私のHPやFacebookで告知しておりますので、気になる方はお問い合わせください。

また、地域や団体でセミナーを開いて欲しいというご要望も承っております。

HP等からお気軽にお問い合わせください。

先日も、ある商店街・町内会主催の100名以上の方が参加された新年賀詞交換会において、税理士と共同で相続対策セミナーを担当いたしましたので、近いうちにその様子をアップしたいと思います。

投稿者: 石原晋介法律事務所

2017.03.15更新

新宿、四谷エリアで弁護士をしている石原です。

 

今回は、無料相談会やネットでの相談でよく聞かれる「専門家を入れずに、自分たち家族だけで遺産相続(遺産分割)をするにはどうすればいいのか?」という疑問にお答えいたします。

 

第1 遺産分割について


 

 

法律では、遺産分割について形式が決められていません。単純に「いつでも、その協議(話し合い)で、遺産の分割をすることができる」(民法第907条第1項)と書かれているだけです。

日本の民法では、意思表示や法律行為で書面を必要とするものは、特別にそのように規定しています。

例えば、ほとんどの契約は意思表示が合致すれば成立する中で、保証人になる場合は、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」(民法第446条第2項)と、いわゆる保証契約書を作らなければいけないと規定しています。

家族関係でいえば、結婚や離婚は「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。」(民法第739条第1項)、「前項の届出は、当事者双方および成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。」(同第2項)、「(婚姻の届出)の規定は、協議上の離婚について準用する」(同法第764条)と、届け出が必要と明確に定められています。

つまり、法律に形式が定められていないため、遺産分割協議は本来は書面でする必要はないのです。

しかし、遺産分割の結果に基づいて、土地や家の登記を変更するため、預金の解約をして払い戻しを受けるには、一定の様式が求められていますので、以下では遺産分割協議書の基本的な書き方などを解説いたします。

 

 

第2 遺産分割協議書の基本的な様式


 

 

 

1.遺産分割協議は、相続人全員で行ってください。なかなか連絡が取れないとか、どこにいるのか分からない人がいたり、あるいはご高齢で自分で判断ができない人がいるからと、その人たちを抜かして協議をしても、協議は有効とはなりません。

どこにいるのか分からない人については、できるだけ調査をして、場合によっては不在者財産管理人を家庭裁判所に選任してもらってください。ご自分で判断できないような人は、成年後見人などを家庭裁判所に選任してもらってください。

また、しっかりと戸籍を調査し、前妻との間に子どもがいないこと等を確認してください。

 

2.協議した相続人全員が、しっかりと署名し、実印で押印して下さい。認め印で済ませるのではなく、印鑑登録をして印鑑登録証明書も取得してください。

印鑑登録証明書は通常3ヶ月以内のものが必要となりますので、できれば遺産分割協議書に押印する直前に取得してください。また、協議書が有効期限内に押印されたことを示すためにも、協議書に日付を忘れずにつけてください。

 

3.表示の仕方についても注意が必要です。

不動産の特定は、登記簿に記載されている通りの所在地で記載してください。住所とは異なることも多いので、住所で記載するのではなく、しっかりと登記を確認して記載してください。

登記を取得すると、実は被相続人以外の人と共有状態にあることが判明することもありますので、面倒くさがらずに取得してください。

預貯金も、銀行名、支店名、口座種別、口座番号、お亡くなりになった日の残高を確認して、できるだけ特定して記載してください。残高が通帳に記載されているものと異なっていたり、同じ支店にいくつか口座があったということもあり得ますので、しっかり銀行に確認し残高証明書を出してもらいましょう。

 

4.財産や相続人が多く、一枚に収まらないときは、ページとページの間に楔印を相続人全員で押してください。

または、製本して製本テープ状に全員で押印することもありますが、間のページを抜かしたり、あとから挿入したりできない方法を取ってください。

 

遺産分割協議書の形式としては、以上の各点に気を付けていただければ、概ね大丈夫です。

内容については別の機会に解説いたします。

 

 

投稿者: 石原晋介法律事務所

2016.04.06更新

今後ともよろしくお願い致します!

投稿者: 石原晋介法律事務所

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