新宿・四谷地区で弁護士をしている石原です。
今回は、会社経営者さん、企業の担当者さんからよく相談を受けます、契約書作成時の注意点のうち、一部についてご説明いたします。
1.契約書とは
契約というのは、ほとんどの場合が書面で行う必要はありません。
これは、法的に書面の取り交わしが要求されていないという意味で、現実的に必要がないという意味ではありません。
法律で要求されていないにもかかわらず、なぜ契約書は作成されるのでしょうか?
お互いに契約交渉をし、「じゃあ、これでやっていきましょう」と喜んで会社に帰って、果たしてそれで仕事ができるでしょうか?
契約担当者は、交渉経緯を分かっているので、どのような契約か分かるかもしれませんが、実務担当者はどうでしょうか?
また、果たして契約担当者同士も、共通認識でいるでしょうか?
契約書は、どのような内容で合意したのかを明らかにし、契約に沿った仕事ができるようにするというのが大きな役割です。
また、紛争になった場合に、裁判官にどのような契約であったのかという証拠として提出できる証拠化ということも見過ごせません。
したがって、契約書は「誰が見ても契約内容・債権(要求できる権利)・債務(やらなければいけない義務)が分かる」ものでなければいけません。
2.契約内容の記載【5W1H】
誰が見ても、何をすべきか分かるというためには、どのように記載すべきでしょうか?
「甲は、乙に対して、バナナを100円で売る」
こんな条項だけの契約書は、果たして上記のような役割を果たしているでしょうか?
誰が? これは甲が義務を負っていることは分かります。
誰に? 乙さんに対して義務を負っていることは分かります。
何を? バナナを売るということは分かります。
幾らで? 100円で売るということは分かります。
問題がないように思えたのなら、トラブルが起きる黄色信号です。
甲が乙さんにバナナを売るとしても、分からないことが沢山あります。
甲はいつまでに乙さんにバナナを届ければいいのでしょうか? 今すぐ食べたい? ケーキを作る日に届けて欲しい? 毎日欲しい?
何に使うのかも、本数も、産地の指定があるのかも、引き渡し場所や方法も分かりません。
そこで、契約書を作成するときは、英語の授業で習った【5W1H】を意識して作成するといいでしょう。
誰が、誰に対し? 何を? いつ? どこで? 何のために? どのように?
全て必ず必要というわけではありません。
しかし、作成された契約書で決められていないけれど、問題となり得ると思うものがあれば、追加・修正をしてください。
私は漫画が好きなのですが、カイジという漫画の登場人物が次のように言っています。
「(金を)出す。出すが、その時と場所の指定まではしていない(中略)その気になれば金の受け渡しは10年20年後ということも可能だろう」
もちろん、通常は、契約全体から見て10年後20年後の受け渡しでも可能ということは無いでしょうが、履行期(いつ)というのはとても大事な要素です。
契約書に支払時期の記載があっても、納品から何か月も後になって支払いというような契約ばかりで、資金繰りが上手くいかない……
という事態もあります。
是非、契約書作成時には5W1Hに気を付けて、作成、取り交わしをしてください。
契約書作成について専門家の意見を聞きたい、作成することが難しいという場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。