新宿御苑前で弁護士をしている石原です。
今朝、でかけにフジテレビの「とくダネ!」という情報番組で、特殊詐欺の新たな手口として、訴訟をしたという通知をハガキで送る方法が増加しているという内容を見かけました。
全て見たわけではないので、番組内容と重複しているところや、番組の主張と異なるところがあるかもしれませんがご了承ください。
1.詐欺を詐欺と見極めるために
詐欺の手口は、とても巧妙ですし、人の不安につけこむ手法を用いているので、自分は引っかからないと思っている人でも引っかかってしまう危険性は十分にあります。
そこで、まずは「訴訟を提起した」という詐欺に引っかからない為に、訴訟手続きの基本などをおさえておいていただくのが冷静に判断するためのコツだと思い、簡単に解説いたします。
2.訴訟の通知
訴訟は、裁判所からハガキで通知されることはありませんし、裁判所以外が通知することもありません(原告が自主的に通知する可能性はあり得ます)。
何かで訴えられた、ということは相手の主張が正当かどうかにかかわらず、出来れば人に知られたくないことですよね。
また、裁判は被告にしっかり防御・反論の機会を与えなければいけないので、通知がちゃんと届いたか、いつ届いたのか分からないハガキなどの方法ではスタートできません。
そこで、裁判所は被告に対して「特別送達」という方法を用いて通知をするのが通常です。
3.裁判(事件)の特定
裁判所は、全国各地にあります。
したがいまして、どこの裁判所で行われるか(係属する)かは、被告のために明らかにならなければなりません。
ですから、どこの裁判所かという情報がない通知は基本的には詐欺だと疑ってみるべきだと思います。
また、同じ裁判所で、同じ当事者の別事件が継続することもありますので、裁判一件一件に事件番号が振られます。
この事件番号には、受付の年が必ず最初につけられます。
年が変わるとまた1号から事件番号をつけていくことになっています。
事件番号には平成29年(ワ)第xxxx号のように、年のあとに符号がつけられます。
民事事件はカタカナ、刑事事件はひらがなというように大まかに分けられ、その中で地裁で行われる通常の民事訴訟であれば(ワ)などと符号だけでどんな事件かある程度は分かるようになっています。
4.通知を受けたときの対応
訴えられた場合は、通知だけが裁判所からくるということはないですが、訴状もそれらしく作ってわざわざ書留で送ってくる詐欺が行われるかもしれませんので、今後訴えられたという通知が来てしまった人のために、どう対応すべきか簡単に私の考え方をお伝えいたします。
まず、どの裁判所に継続しているのかを送られてきた書類で確認してください。
どの裁判所なのかよくわからなければ詐欺の可能性があります。
次に、その裁判所の代表電話番号をインターネットや電話帳で確認して、電話してください。
届いた書類に書かれている電話番号だと、詐欺グループの電話の可能性があるからです。
裁判所に電話がつながったら、係属部、事件番号を伝えてください。
書かれている事件番号がでたらめだったりすれば、裁判所がその番号はおかしいと教えてくれるはずです。
また、実際の事件番号でも当事者名や事件名が違っていれば、そのように教えてくれるはずです。
ここまで間違いが内容だと、実際にあなたを被告とした裁判が継続している可能性が高いので、弁護士に今後の対応を相談してください。
裁判所は、提出期限や形式的なことは教えてくれるでしょうが、主張すべき内容などは教えてくれません。
5.注意事項
以上のように、詐欺の場合は通常の訴訟の手続きと異なる点があるので、詐欺かどうかを見極める一つのポイントとして覚えていただきたいのですが、債権者(原告)から訴訟をした(あるいはする)という通知をすることや、どのような通知をするかは自由です。
したがいまして、以上のような通常の裁判の流れと違っているような場合でも、100%詐欺だとは言えないこともあります。
判断がつかない場合は、記載された電話番号などに電話せずに是非弁護士にご相談ください。