新宿御苑前で弁護士をしている石原です。
先日、友人との間で離婚に関する手続きの期限が話題になりましたので、いい機会だと思いまとめてみました。
1.離婚について
協議離婚の場合は、離婚届を作成し提出することで離婚できると皆さん分かりますが、裁判所の手続きである調停や裁判で離婚するときは、どのような手続きが必要なのかはご存じないと思います。
離婚調停は「調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したとき」に成立すると定められています(家事事件手続法268条1項)。したがって、「調停により離婚する」という内容の調停調書が作成されたら離婚は成立します。
ここで注意が必要な点は、離婚届を提出する内容の合意ができてしまった場合です。「協議離婚することとし、申立人は●月●日までに届け出る」というような内容だと、実際に離婚届を出した時が成立時ということになります。
訴訟による場合は、判決が確定したときに成立します。訴訟の途中で和解したときは、調停と同様調書にその旨記載されたときに成立します。
しかし、離婚の手続きはこれで終わりではありません。
裁判所から調停調書や、判決の謄本(判決のときは確定証明も必要です)を受け取り、調停成立または判決確定の日から10日以内に届け出をしなければいけません(戸籍法77条1項、63条1項)。気を付けていただきたいのは、起算日(期限の1日目)が謄本を裁判所から受け取った日ではないこと(戸籍法43条1項)、間に休日などがあってもその日も含めて計算することです。
この期間を守れないと、過料という制裁があり得ますのでお気を付けください。
謄本の取得の仕方は、裁判所の窓口で教えてくれます。戸籍届出用と伝えれば、必要事項だけ記載された省略謄本というものも選択できます。
あらかじめ申請書を作成しておきたい時は、東京家庭裁判所の「その他の申請」の案内をご参照ください。
2.離婚後の氏について
民法上は、結婚するときに氏(苗字、姓)を相手の氏に変更した人は、離婚によって結婚前の氏に戻るとされています(民法767条1項)。
しかし、長年の結婚生活で使ってきた氏や仕事上も変更してしまった氏を離婚後も使用したいこともあると思います。
その場合は、離婚から3か月以内に届け出ることによって、離婚の時(結婚中)の氏を使い続けることができます(同条2項)。
離婚成立前に、あらかじめどちらにするのか検討しておいて、離婚の届出と同時に「離婚の際に称していた氏を称する届」をしてください。また、その際は離婚届の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」を空欄にして届出をするそうです。
3.子どもの入籍
離婚により氏が戻る人が未成年の子どもの親権者であっても、子どもの氏は自動的に変わりません。また、上記の「離婚の際に称していた氏を称する届」をしていても、戸籍上は子どもと親権者の氏が異なることになります。
そこで、結婚するときに氏を変えた親権者の戸籍に子どもを入れるためには、裁判所において「子の氏の変更許可」を得てください。
手続については東京家庭裁判所の「家事審判の申立」ページ内の「子の氏の変更許可」をご参照ください。
許可の審判が出ましたら、審判書の謄本をもらい、子どもの本籍地や親権者の住所地の市区町村役場に「入籍の届」をしてください。
この許可や届出には期限はありませんが、生活上不便があると思いますのでなるべく速やかに行ってください。
4.年金分割
今回、友人との間で話題になったのは、年金分割の期限でした。
年金分割の詳しい内容などは別の記事でご紹介します。
年金分割は、離婚成立から2年以内に実施機関に対し請求しなければなりません(厚生年金保険法78条の2第1項)。
離婚時に話し合いや調停・審判で按分割合などが決まればいいのですが、離婚後にも按分割合を巡って調停・審判で争っていると、この2年を経過してしまうこともあり得ます。
しかし、その時は年金分割の調停成立や審判確定の翌日から1か月以内に請求すれば間に合います(同法施行規則78条の3第2項)。
許可抗告や特別抗告まで争う場合は、注意が必要です。これらの手続きには審判を確定させない確定遮断効がないとされているため、まだ争っている内に上記1か月の期限が経過してしまうことになるからです。
5.財産分与
婚姻中に夫婦で築き上げた財産を離婚時に清算する必要があり、財産分与を求めることができます。
詳しい内容はこれも別の記事でご紹介します。
財産分与は、離婚から2年を過ぎると裁判所に申し立てをすることができなくなります(民法768条2項但書)。
財産分与と年金分割は、離婚後・老後の生活基盤としてとても重要なので、出来る限り離婚の申立てと同時に申し立てをするようにしてください。
多くの弁護士は、調停成立までは担当してくれると思いますが、その後の届出等はご本人にやってもらっていると思います。弁護士からちゃんと説明を受けない場合もあり得ますので、せっかく望む内容の調停が成立したのに期限経過で実現しない、制裁を受けたということがないように、ご注意ください。
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